アリアドネー、三大悲劇詩人たちの名前は全員言える? |
アイスキュロス、ソポクレース、えーと、 あと一人が……エウ…エウ… |
エウリーピデース。 |
そう、その人。 |
この三人の男たちの悲劇は、 上演されてから2000年以上たってもなお根強い人気があるね。 完全に残っている作品も多い。 この三人以外にもたくさん悲劇詩人たちはいたが、 その作品のほとんどは散逸してしまって もう残ってないことが多い。 |
ほかにはどんな人がいたの? |
有名どころだと、 あの人間の分際を誰よりもわきまえていた男 ソークラテースの弟子、 アガトーンとか。 エウリーピデースとは若干時代がかぶってるかな。 とにかく三大悲劇詩人の後輩だ。 神話伝統にのっとって書くのが一応悲劇のセオリーだが、 エウリーピデースぐらいから、 伝統神話に新しい筋立てを挿入したりしてきた。 だけれど、この男はプロットを創作するどころか、 登場人物まで創作しだした。 あと、そうそう、同じくソークラテースの弟子のプラトーンも 悲劇作家になりたがってたね。 |
ならなかったの? |
いくつか悲劇を書いてる。 それに、その悲劇の断片は残っているよ。 しかし、結局この男は愛知《ピロソピアー》― ―すなわち、後の言葉で言うところの哲学の道を選んだ。 それで、 「書かれたものを信用するな―演劇を信用するな」 なーんて言っている。 彼自身、ものを書いたからこそ、 2000年たっても思想が残っているって言うのにね! それに、彼の対話編を読んだことがある人にはわかるだろうけど、 すごく演劇的な文章を書くよ。 |
面白そう。 |
うん。それにわかりやすいしね。 たまに、演劇的というよりも、 最近で言うところの映画のようなシーンを思わせる箇所もある。 文章が良いだけじゃなくて見せ方がうまいよ。 |
ねえ、見せ方がうまいのはわかりましたけど、 私たちは哲学の話をしてるんでしたっけ。 |
おっと、話がそれた。 |
ともかく、三大悲劇詩人はもうわかったね。 |
ええ。 |
じゃあ、どういう場所で この男達の悲劇が上演されていたかは知ってるかい。 |
そのくらいはわかります! アテーナイのディオニューソス劇場でしょ。 |
そうそう。これを知らなかったらお仕置きをするところだ。 |
そう、このすり鉢状の劇場で、 悲劇、サテュロス劇、喜劇なんかが上演された。 まあだいたい、頑張れば30000人くらいは入るかなあ。 |
まあすごい。 |
アテーナイで毎年春に開催された演劇の祭典 大ディオニューシア祭は、 アテーナイの市民はとりあえず全員参加! ってことになってる行事だからね。 ぎゅうぎゅうにつめれば多分市民全員が入れたんじゃないかな。 実際に来ていたのは市民の約半数、 16000人くらいだったような気がするけど。 |
さて、この大ディオニューシア祭では、 毎年三人の詩人達が悲劇作品を競った。 一人の詩人につき三本立ての悲劇、 加えてサテュロス劇を上映する。 役者は初め二人、のちに三人だ。 |
えっ、登場人物が多いときは? |
仮面や衣装をスケーネー(背景)の裏で変えて、一人で何役もやる。 |
大変ね。 |
そう。だから、書くほうも色々と工夫が必要だったし、 役者には高度に洗練された技術が要求された。 声音を変えて話したり、歌ったり踊ったりする、 そういう能力が求められたんだ。 |
マイクがまだない時代だから、何万人にも届く発声が必要ね。 |
オペラ歌手なみの肺活量が必要だね。 でもまあ、すり鉢状の円形劇場は驚くほど音響が良い。 ものすごく響きが良すぎて、 客が入って丁度良くなるくらいのところもあるしね。 |
なんだか魔法や神業がかった劇場ね! |
そうさ。だって僕のための宗教行事が行われてたんだから。 さあ、予備知識はこのくらいでいいだろう。 実際に作品を見てみよう。 |