ディオニューソスとアリアドネーの

かんたんギリシア悲劇講座




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12月16日 オレステイアその2その3スケーネーの裏追加

2009年12月7日 開講



私は轟き鳴る神、ディオニューソス。
大神ゼウスの体内より生まれ、
酩酊と狂気を司る。

元人間、ディオニューソスの妻アリアドネーでございます。


さて、アリアドネー、僕はいったい何の神だったかな?

お酒…というか、酩酊と狂気の神様ですよね。
さっきご自分で仰ってたじゃない。

それだけ?

えっ?

毎年、早春にアテーナイで上演されていた僕のための宗教行事、
「大ディオニューシア祭」はいったい何のお祭りだっけ?

あっ…演劇祭、ですね。

そう。だからつまり?

あなたは演劇の神様。

そうだ。 

どうも君は僕の妻でありながら、演劇に明るくないようだね。

だって、なんだか難しいんですもの。
とくにギリシア悲劇って。

なんで?

だって、背景の伝統神話を知らないと
何が面白いのかよくわからないんでしょう?

まあ、そうだね。
観客たちはみんな話の結末をあらかじめ知っていて、
劇場に足を運んだんだから。

最近は、オイディプースの伝説を知らずに
『オイディプース王』を見て
ありがたがる人間もいるみたいだけど、
ずいぶんと損をしてるなあと思うよ。

ほら。やっぱり知識がないとわからないんじゃない。
それに、ギリシア悲劇っていつも結末が悲しくて、恐ろしくて、
わたくしそういうの辛くて苦手。


おいおい、君がそんなことを言っちゃ困る。

ギリシア悲劇はすばらしいよ。
人間たちがその限界の中で、
人間を超えるもの
―つまり僕たち
という存在を意識することで、
足掻き、苦しみ、しかしその限られた生を賛美する。
惨めで、痛ましいが、とても美しい。
人間という存在はちっぽけだが、
同時にこんなにも美しく荘厳でありえると、
僕はギリシア悲劇を見るたびに思う。
こういうものを生み出すことができるから、
人間ってやつは面白いね。

それに、全部が全部悲痛な終わり方をするわけじゃない。
ハッピー・エンドだって結構あるし、
君が言う「悲しくて恐ろしい」結末にだって、
ちゃあんと救済はあるんだぜ。


そう言われると、なんだか面白そう。

よろしい。
では僕が無学な奥さんのためにひとつ教育をしてあげよう。

まあ、ありがたいけど、あんまり難しいのはやめてね。

大丈夫。君でもちゃんとわかるように、
演目ごとに特別ゲストをお呼びしよう。

それじゃ、はじめようか。


目次
0. はじめに:基礎知識
   悲劇詩人たち、上演形態など
1. オレステイア:その1その2その3
   アトレウス家ネタの悲劇たち〜価値観の推移






★スケーネーの裏
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