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こんにちは。おまちかねのみなさん、本日はたんざわがお送りします!
いよいよ11日より本番ということで最後のコラムのテーマは「家族の話」
少しばかり、今回上演する物語についてお話していきましょう。

『コエーポロイ』というお話は、一つの家族がそれぞれの正義によって苦しみ、引き裂かれていく様を描いた作品。「オレステイア三部作」の二作目にあたります。
一作目である『アガメムノーン』は、大きな戦争(10年続いたトロイア戦争)を見事勝利に導いた総大将アガメムノーンが、帰国直後に妻とその愛人によって殺されるというお話。
これだけきくと、妻!ひでえな!ってなりそうですが……実は、アガメムノーンは戦争で勝利を収めるため、妻には内緒で、自分の娘のひとりを神への生贄として差し出した経緯があります。娘は自分の死を受け入れ、死んでいきました。父親としても苦しい決断だったでしょう。しかし何も知らされないままに娘の命を奪われた母親の怒りと悲しみは10年という時を経て増幅し、夫を殺すというところに帰結してしまいます。

そして今作『コエーポロイ』は父を殺された息子が復讐を果たすお話。
つまり、娘の命を父親が奪い、その父を母が殺し、今度はその母親を息子が殺すという、絶望的な復讐が連鎖していく様を描いているのです。

自分の信ずる正義を果たしたい。けれどもそれは本当に正しい選択なのか。
私達が生きている中で、選択しなければならない瞬間が必ずあるでしょう。そこには「正解」などない。あるのは選択の結果を自分自身で背負わねばならないという事実だけです。
血で血を洗いあわねばならない宿命を背負った家族の姿を通して見えるのは、決断に苦しむ人間の姿。その決断は誰がさせたのか。自分自身が?それとも、復讐の女神たちが耳元でささやいた?「復讐しない」という決断はないのでしょうか。それが許されないのはなぜ?わたしには沢山の目が、その、復讐を遂げる人間の姿をにやにやと見つめているような気がしてなりません。

さて。今回の公演では「家族割」という割引をしています。
本作で取り上げられている「家族」は血のつながりによる家族ですが、家族ってそれだけじゃないですよね。法律上のつながりはなくても同棲してたりルームシェアしてたり…一緒に住んでたら家族かな。だけど一緒に住んでなくても血のつながりがあったら家族だよね?あれ、でも一度もあったことの無い血縁者もいるし…。同じ釜の飯を食えばみな兄弟なんていったりするな。友達のことも身内、なんて言ったりする。うーん。家族って一体どんなつながりなんでしょう。
この機会にぜひ、あなたの「家族」と一緒に劇場に足を運んでいただけたらと思います。

古代ギリシアコラム、これにておしまいです!最後までお付き合いいただきありがとうございました。またの機会にお目にかかりましょう。最後はたんざわがお送りしました。

 

『ひとりギリシア悲劇 コエーポロイ』の上演は11月11日・12日! ぜひぜひ足をお運びください。ご予約お待ちしております)

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